YOGA(ヨーガ)の八部門
統合的なヨーガであるラージャ・ヨーガの代表的な聖典、「ヨーガ・スートラ」に添って、ヨーガの構造や
行法を理解してゆきましょう。 ヨーガ・スートラとは、パタンジャリという聖人によって紀元後4~6世紀頃に
完成された聖典と言われています。
八段階の積み重ねによって構成されているので、アシュタンガ(8つの部分=八支則の)ヨーガと
言われています。
ラージャ・ヨーガの行法は、日常生活においての規範である行為(カルマ)を、8段階に分け、
一段ずつその目的(サマーディ)に達する為に、山々を登りつめていくようなものです。
先回お話した五つの鞘からなる私達の存在の各層に働きかけ、人間が本来備えている肉体と精神と
そして霊性の資質や能力が高められ、バランスあるものとなり、心身の健康度が飛躍的に高まり、
その人自身の生き方(自己実現)に多大な実りをもたらすものとなります。
第一段階 ヤーマ = 「禁戒(きんかい)」 (禁止事項 / 対人次元の自己意識化)
1.暴力(アヒンサ) -不殺生戒 無用な暴力、殺生をくわえない。
2.嘘(サティア) -不妄語戒 言葉と行動を一致させ誠実なものとする。
3.不盗(アステーヤ) -不盗戒 他人の物、時間、喜び、心までも盗まない。
4.梵行(ブラフマチャリヤ) -不邪淫戒 性欲に溺れない。 性行為に没頭しない。
5.非所有(アパリグラハ) -不貪戒 物に執着しない。 酒に溺れない。
これらの禁戒が、身分、場所、時、祭祀の習慣によって制限されず、ありとあらゆる条件下において
守られる時、大誓戒(マハーヴラータ)と呼ばれる。 (※ いかなる場合でも、行者に例外はない)
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-30)
暴力などの邪念(ヴィタルカ)は、既に自分が為したものと、他人をして為さしめたものと、そそのかされて
したものとがあり、貧、怒、痴のいずれかに由来するものとがあり、軽 ・ 中 ・ 激なものとがあるが、
苦しみと無智さを際限なくもたらす。 それゆえに、抵抗する手段を念想し続けなければならない。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-34)
非暴力(アヒンサー)に徹していると、全ての生き物が敵意を捨てる。
※ マハトマ・カンディーの信念 (ヨーガ・スートラ Ⅱ-35)
不盗に徹していると、あらゆる種類の財宝がその行者の前に集まって来る。
※ 心の中の盗みも同じである。 (ヨーガ・スートラ Ⅱ-37)
第二段階 ニヤーマ = 「勧戒(かんかい)」 (お勧め事項 / 対物次元自己意識化)
1.清浄(シャウチャ) ヨーガにおいての清浄とは、肉体次元と心的次元(慈悲喜捨)をさす。
2.知足(サントーシャ) 与えられた環境・現状を受け入れて感謝、満足し、肯定の姿勢でいる。
3.苦行(タパス) 日常において自らに課した「行」や仕事の積み重ね。 山にこもることではない。
4.聖典読誦(スヴァーディヤーヤ) 聖典を読み、真言(マントラ)を唱え智慧を積むことに努める。
5.神様への帰依(イーシュヴァラ・プラニダーナ) 神への信仰なしではヨーガではない。
※ ヨーガでいうところの神とは、風、空、土、水いたるところに在られる。
清浄(シャウチャ)の戒律を守れば、自己の肉体への嫌氣が生じ、他人の肉体と接触したくなる。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-40)
満足(サントーシャ)によって、無上の幸福(スッカ)が得られる。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-42)
苦行(タパス)によって不浄さが尽きるから、身体(カーヤ)と感覚器官(インドリア)の制御に熟達する。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-43)
聖典読誦(スヴァーディヤーヤ)によって、自選の神様(イシュタ・デーヴァタ)と出会う。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-44)
自在神(イーシュバラ)への誓願(プラニダーナ)によって、三昧に熟達する。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-45)
第三段階 アーサナ = 「体位法」 (ヨーガの体操 / 肉体次元の自己意識化)
この部分が現在のヨーガブームの中で一番重要視され、行われているものです。
アーサナとは、アース「座る」という言葉が語源になっています。 つまり、元来「瞑想」を主な行法とする
ラージャ・ヨーガは、座ることが基本なのです。 アーサナ(座法=体位法)は大別して
①瞑想の為のもの ②リラックスの為のもの ③身体を造る為のものとに分けられます。
この領域はアンナマヤ・コーシャ(食物鞘)の調整になります。
アーサナ理論は次回の項目で詳しく述べることとします。
「座法(アーサナ)は安定して、快適なものでなくてはならない。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-46)
「弛緩(シャイティリヤ)に努め、無辺なるもの(アナンタ)に入定(サマーパティ)することで、
座法に熟達する」 (ヨーガ・スートラ Ⅱ-47)
「その時、二極の対立物(ドゥヴァンドゥヴァ)によって害されない。 ※寒熱、苦楽、毀誉、褒貶等など。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-48)
※ アーサナ理論へ
第四段階 プラーナ・ヤーマ = 「調氣法」 (呼吸法 / 呼吸次元の自己意識化)
こちらもいわゆる「現代ヨーガ」の中で良く用いられる行法です。
調氣法とは、宇宙のエネルギー・生命力(プラーナ)を制御(アーヤーマ)する行法です。
数々の呼吸法によって、酸素を体内に取り入れ、血液を燃焼させ、生命エネルギーに転換する作用に加え、
交感神経と副交感神経のバランスをとったり、心のスピードを制御することに有効です。
この領域はプラーナヤマ・コーシャ(生気鞘)の調整になります。
プラーナ・ヤーマ理論は次回の項目で詳しく述べることとします。
それ(坐法)が安定した上で、呼気と吸気の流れを分離する調気を行ずる。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-49)
外(バーヤ)と内(アビヤンタラ)の範囲(ヴィヤサ)を超越したものが、第四の調氣法である。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-51)
これによって、光(プラカーシャ)を覆うものが消滅する。 (ヨーガ・スートラ Ⅱ-52)
また、意思(マナス)が、疑念(ダーラナ)に適するようになる。 (ヨーガ・スートラ Ⅱ-53)
※ プラーナ・ヤーマ理論へ
第五段階 プラティヤハーラ = 「制感(せいかん)」 (制感 / 意思鞘次元の自己意識化)
プラティヤハーラとは「向けて集める」という意味です。意思の働きを内に向けて、理智の働きに集める。
今までの肉体的次元から、心理的次元へと入る掛け橋となるのがこのプラティヤハーラの段階です。
この領域は、マノーマヤ・コーシャ(意思鞘)の調整になります。
諸感覚器官がそれぞれの対象に結びつかず、あたかも心素(チッタ)自体に似たものの如くになるのが、
制感(プラティヤハーラ)である。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-54)
これによって、諸感覚器官に対する最高の支配が生ずる。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-55)
第六段階 ダーラナ = 「凝念(ぎょうねん)」 (精神集中法 / 理智鞘次元の自己意識化)
凝念は、心をある一点にとどめて動かさないことです。
この凝念と次の静慮、三昧の段階は実際には、はっきり分割できない一連の心理的流れとなり、
一括して統制(サンヤマ)とよばれます。 オーム瞑想法が代表的な行法です。
この領域は、ヴィジナーナマヤ・コーシャ(理智鞘)の調整になります。
凝念(ダーラナ)とは、心素(チッタ)を特定の対象物(場所)に縛り付けておくことである。
(ヨーガ・スートラ Ⅲ-1)
第七段階 ディヤーナ = 「静慮(じょうりょ)」 (禅那 / 歓喜鞘次元の自己意識化)
ディヤーナは中国で音訳し「禅那」となり、日本に渡って「禅」となっています。
心が内外のある場所に集中し続けるよう訓練されると、その一点に向かって不断の流れとして流れ
続ける力がつきます。 この状態がディヤーナと呼ばれるものです。
ディヤーナの力が非常に強くなって、外界からの知覚情報を退け、内界に存在するものの意味だけを
瞑想し続けられるようになると、その状態が三昧(サマーディ)なのです。
この瞑想状態は、人間存在の最高の状態です。
この領域は、ヴィジナーナマヤ・コーシャ(理智鞘)の中心的最終調整になります。
その対象物に対する想念が、一つの不断の流れとなっているのが、静慮(ディヤーナ・禅那)である。
(ヨーガ・スートラ Ⅲ-2)
それらの諸煩悩の活動は、静慮(ディヤーナ)によって除かれねばならない。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-11)
第八段階 サマーディ = 「三昧(さんまい)」 (三昧 / 歓喜鞘次元の自己意識化)
理智の働きの領域を超えた疑問、「神の存在」・「魂の存在」・「神のご意思」に解答を得られるのが三昧。
「梵我一如」の心境で対象も主体も、ともに統合(ヨーガ)した状態をいいます。
仏教では、これを「空(くう)」と言い表していますが、この境地は「なにもない」という意味ではなく、
直感的洞察や啓示の場であり、宇宙的意識の働く空間でもあります。
サマーディは全ての人の財産です。 いつかはその境地に達しなければなりません。
その時初めてその人にとっての真の宗教が始まり、魂は永遠に解放されるのです。
その対象に対する意識だけとなり、心素自体の意識が無くなっている時の静慮が三昧(サマーディ)である。
(ヨーガ・スートラ Ⅲ-3)
ヨーガの諸部門を修行してゆくにつれて、心の不浄さが消えて行き、それにつれてやがて、
識別智(ヴィヴェカキヤーティ)を生じさせる智慧の光が輝き出す。
(ヨーガ・スートラ Ⅱ-28)
ヨーガのそれぞれの段階の全ては、私たちを科学的に超意識状態(三昧)に連れて行くことを
目的としています。 一部の予言者だけでなく、誰でもが終にはこの意識状態にまで達しなければならない
のであって、それが宗教というものなのです。
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